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さつじんき
殺人鬼
浜尾 四郎
「名古屋新聞」1931(昭和6年)4月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,139 字 · 13 页
僕も誰か相手をつかまえてお茶でも飲もうと思つてたところなんだ。じやここへはいるか」
私は早速彼をさそつて、そばにある喫茶店へと飛び込んだのであつた。
店の中は、よい按配にすいていたので、二人は傍のボックスにさし向いに坐りながら、ボーイに紅茶と菓子を命じた。
「おい小川、僕はこうやつてさし向つて腰かけるが、これは何故だか判るかい」
「あいかわらず、藤枝式の質問をするね。話をする為じやないか。つまり二人で語り合うために最も自然で便利な位置をとるのさ」
「そうさ。ところで君はこういう事実に気がついているかい。こういう位置をこういう場所でとるのは、ある人々にとつてのみ自然であるという事さ」
「なんだつて。ちよつと判らないね」
私はこういいながら、ボーイが運んで来た紅茶に自分で角砂糖を二ツ入れた。
「ちよつと、あそこを見給え」
藤枝が、ふと右手の方をさしたので、私は右後の方に目をやると向う側のボックスに、二人の二十才位の婦人が、一列にならんでこちらに背をむけて仲よく話をしている。
「わかつたかい。若い女同志だとああいう風にならぶんだ。あの人たちにはああ並ぶ方が便利だと見える」