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ははとむすめ
母と娘
岡本 かの子
「女性文化」1934(昭和9)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,828 字 · 20 页
でも二三日居付いたら、どう私達の考えが変るかわかりません。
六月二十一日 第六信(ベルリンにて)
今日は一日ジャネットの家で話して暮しました。ジャネットの母はイリデと言うの。大変に憔れて居るわ。私達の独逸語を習いたい事を話したら、笑って、――つまらない事だ、斯んな国の言葉を憶えたって役に立たないでしょう。でも昔は帝政時代のドイツはどんなに立派だったか、見せたい――
と言いました。ジャネットの兄のウイリーは目下仕事がないので大学の講義を聴きに行きます。仕事があれば――道路普請の人夫でも――大学を止めて働きに行くそうです。イリデ叔母様とジャネットと私達二人一緒になってお店の商品を片っぱしから英仏独で呼び合いました。とても滑稽でしたわ。もう少しやればお客様に応待出来るでしょうと言われて大笑いよ。晩方ちょっと通りへ出ただけでした。
六月二十四日 第七信(ベルリンにて)
ママ、今日は早起きをしたの、五時にね。だってジャネットの学校を見せて貰うのだったから。ジャネットの学校はベルリンの西北隅に在る市立音響体操学校と言うの。女学校を卒業して一二年の間――結婚前のドイツ女子の希望者の為めに特に便宜を計って毎朝六時から八時頃まで色々の楽器――ピアノ、タンバリン、ヴァイオリンなどの音の強弱に合せて色々の体操をするのです。