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ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

ですから僕も久し振りに英語のおさらいだと思って雄弁にやりました」若者は笑いながら舌で唇を嘗めた。

この上取次を揶揄う材料もなくなり、逸作は今度は、K・S氏の日本画壇への紹介方法について直ぐに考え出した。

「彼、展覧会をするような作品を持って来ただろうか」

かの女は、

「兎に角今夜は銀座でも見せてあげて、日本食を上げましょう。直ぐホテルへ電話かけてあげて下さい」

「よし、君は新夫人に花でも持って行ってあげたらいい」

かの女は早速着物を着換えた。K・S氏は巴里画壇の大家の中でも、特にむす子に親しくして呉れている人であり、先輩というより、兄分といった程に寛いでむす子が交際っていることは、かの女によく知れていた。それ程むす子に与えられている知遇に親が報いてやるための奔走はもちろんのことながら、もし自分がむす子の母として、K・S氏に悪い印象を与えるような婦人であったら、K・S氏が今後むす子に対する思惑にも影響しまいものでもない。わけて女である新夫人も一緒にいることではあり、これは十分心遣いが要るとかの女は思った。母思いのむす子は、母の前では母に厳しく、母の陰では母が自慢であった。