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ぼしじょじょう
母子叙情
岡本 かの子
「文学界」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页
私はいつも彼の画を見て惚々とします。何と云っても一番人を融かすところのものは、彼の詩人的素質です。この素質が、彼の酷しいリアリズムを神秘にまで高めます。彼は今前衛画派の花形のうちで一番年少でありながら、一番期待と興味を持たれています。彼を見ると全く芸術家はテンペラメント一つだという気がします」
かの女はこれを旅先の知友が、滞在地で世話をする父兄に向って云うお世辞ともお礼心とも思わなかった。事実かの女は、近年美術季節毎に、権威ある美術批評を載せるラントランシジャン紙上に掲載される十指ほどの画家の中にむす子の名も混っているし、抽象派の機関誌にアルプとかオーザンファン、セリグマンとかいう世界的な元老の作品の頁と並んで載っているむす子の厳格な詩的な瑞々しい画に就いては何の疑いもなかった。あのむす子が、精力的な西洋人の間に入って押して行く体力のほどが気遣われた。
「あの子は相変らず身体は小さい方でしょうか」
するとK・S氏は、やっぱり女親は女親だという風に見やって
「ご心配なさるな。イチロはもうあなたのお考えになっているような子供さんではありません。逞しい立派な青年です」