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ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

この点ジャーナリストから重宝がられた。任官上の不満は、彼の表現を往々に激越な口調のものにした。

国々を転々して、万年公使の綽名がついた頃、名誉大使に進級の形式の下に彼は官吏を辞めさせられた。二三の新聞雑誌が彼のために遺憾の意を表した。他のものは、彼もさすがにもう頭が古いと評した。

彼は覚悟していたらしく、特に不平を越してどうのこうのする気配もなかった。それよりも、予て意中に蓄えていた人生の理想を果し始めにかかった。

「人生の本ものを味わわなくちゃ」

これが父の死ぬまで口に絶やさなかった箴銘の言葉でしたと、規矩男は苦笑した。

父の越後は日本の土地の中で、一ばん郷土的の感じを深く持たせるという武蔵野の中を選んで、別荘風の住宅を建てた。それから結婚した。

「ずいぶん、晩婚なんです。父と母は二十以上も年齢が違うのです。父はそのときもう五十以上ですから、どう考えたって、自分に子供が生れた場合に、それを年頃まで監督して育て上げるという時日の確信が持てよう筈は無かったのに――その点から父もかなりエゴイズムな所のある人だったし、母も心を晦まして結婚したとも考えられます」