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ぼしじょじょう

母子叙情

岡本 かの子

「文学界」1937(昭和12)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,355 字 · 153 页

青空文庫

規矩男の母は、規矩男の養育の相談相手に、僅かに頼れる旧知の家として、度々織田の家庭を訪ねるのであった。

規矩男自身と云えば、規矩男は府立×中学を出て一高の×部へ入り、卒業期に肺尖を少し傷めたので、卒業後大学へ行くのを暫く遅らして、保養かたがた今は暫く休学しているのだという。だがもう肺尖などとうに治っている。保養とは世間の人に云う上べの言葉で、……と規矩男は稚純に顔を赫らめながら、やや狡智らしく鼻の先だけで笑った。

「ではお父さまの云われた人生の本ものとかを、今からあなたも尋ね始めなさったの」

と、かの女も口許で笑って云えば、規矩男は今度は率直に云った。

「僕は父のように甘い虫の好い考えは持っていませんが……然し知識慾や感情の発達盛り、働き盛りの僕達の歳として、そう学校にばかりへばりついて行ってても仕方がありませんからね」

「でも大学は時間も少いし呑気じゃありませんか」

「それが僕にはそうは行かないんです。僕という奴は、学校へ行き出せば学校の方へ絶対忠実にこびりつかなけりゃいられないような性分なんです。僕自身の性格は比較的複雑で横着にもかなり陰影がある癖に、一ヶ所変な幼稚な優等生型の部分があって……嫌んなっちゃうんで」