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ははおや
母親
豊島 与志雄
「読売評論」1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,057 字 · 11 页
ただ、林檎と柿と蜜柑の二つずつは、あまり惨めすぎる。小さいのでよいとあなたは言った。でも恰好のよいのをとは、大出来だった。お仏壇のことも、私は咎めはすまい。
信子は家に帰って、果物をお盆にのせ、仏壇に供える。二階には他の一家族が同居しており、小さな家なので、六畳と四畳半の二室きりだが、仏壇だけは、小型にしても紫檀の立派なものだ。戦死した高須の位牌もその中にある。
信子はお茶をいれ、それから、いま供えたばかりの果物を仏壇からさげて、皮をむき、喜久子に食べさせる。
「もう食べてもいいの。」
「ええ。いちどお供えしておけば、それでいいんですから、食べなさい。ほんとは、あなたに買ってあげたのよ。」
「七つのお祝い?」
「そうですよ。そして、来年からは学校……。嬉しいでしょう。」
喜久子はにっこり頷いて、果物を食べる。
「あ、お母ちゃん、お宮には、もういかなくてもいいの。」
「もういいことにしましょうよ。さっきお詣りはすましたんだから、二度お詣りするのも、おかしいでしょう。わたしが、思いちがいしていましたよ。」
「わかったわ。みんなが着ていたような、美しい着物がないからでしょう。