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ひかくかがくろん

比較科学論

中谷 宇吉郎

「寺田寅彦――比較科学論」新潮社、1959(昭和34)年4月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,520 字 · 19 页

青空文庫

ところで、その場合にもいろいろあって、そのうち一番分りやすいのは、昔からよく分っている原理を使って、更に高性能なものをつくる場合である。たとえば人工衛星のようなものは、その原理は、ニュートンによって、樹立されたもので、今日でもそれを一歩も出ていない。或る物を投げる場合、速度が小さければ近くに落ちるが、大きくすると、遠くまで届く。速度が大きくなるほど遠くまで行くので、うんと大きくすると、地球の反対側まで達する。それ以上速くなると、もう落ちて来なくなって、人工衛星になるわけである。月が地球を廻るのも、林檎が地面へ落ちるのも、同じ万有引力という力によるというのが、ニュートンの発見であるが、これがすなわち人工衛星の原理である。

原理はよく分っているのであるが、実際に人工衛星をつくること、すなわち地球の反対側よりももっと向うまで行くような超高速度を得ることは、非常に困難である。従来は、夢のような話と思われていた宇宙速度にまで到達したという点では、ロケットの飛躍的な発達は、今世紀の科学の勝利である。しかし純粋な科学の立場からいえば、人工衛星または人工惑星がもつ意義は、それによって、宇宙の研究で従来不可能であった分野が、研究可能になったという点にある。