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きままもののにっき

気まま者の日記

山中 貞雄

「映画評論」1935(昭和10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,728 字 · 4 页

青空文庫

外国の映画では、此の台詞の点実にねたましく感じる。

煎じ詰めた、而も、たまらなく美感と滋味のこもった言葉が小癪なほど豊富に飛び出し、而もそれ等が一つ残らず(画面)の底にとけて流れて行く。

あそこまで行かねば嘘だと、いつも歯痒く思う。

そして、今さら、自己の生活体験の浅薄をしみじみとかこたざるを得ないのだ。

これは余談になるが、新しい大衆小説から得る台詞の言葉より、古い講談本等に非常に味のある言葉が多い。

古い民謡と、新民謡新流行歌とを対比する様に、現代人の言葉には非常に粉飾が多いが、昔の人の言葉には余分のものがない。

直情的だ。

それだけに短い言葉にも真実がある。短い言葉にも社会が反映しており、思想がこもっている。

スピードが生命の映画では、欠くことの出来ない捨台詞は別として出来る限り無駄台詞をつつしまねばならぬことは誰も知っていることであろうが、そのくせなかなかむづかしいのだ。

言葉の味のことで、ふと思いついたが、酒を飲む者の言葉には注意していると面白いものが多い。

「山中の道楽は酒を飲むことと、映画を見ることだ。」

と言われているのを耳にする。