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きむずかしやのけんぶつ

気むずかしやの見物

宮本 百合子

――女形――蛇つかいのお絹・小野小町――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,739 字 · 6 页

青空文庫

女形には、芸の上に於て、其那腕のなさはない代り、どうしても、エキスプレッションが、女形の芸としての知識の範囲を脱し難い。真個の女性が無意識に流露させる女らしさが、微妙な隅々で欠けているので、天真の軟らかみが乏しいとも云えよう。女形の女性は、筋の上で与えられた性格の特質だけを強調する点ではうまいかもしれないが、それ等の底に流れ満ちている泉のような何ものかを胸に抱く事は、殆ど不可能であるらしい。

私は、「両国の秋」では梅幸の蛇使いお絹、その他を観、部分的のうまさには深く感心しながら、右のような感を押えることが出来なかった。

お絹の絶望的に荒んだ心持はよく出ていた。

特に、二幕目の始め、お絹の処へ林之助が訪ねて来た時、心に一杯の恨みと憤りとを持ちながらも、男が来たと知ると我知らず手をあげて髪をなおすしぐさの、如何にも中年のああ云う商売の女らしい重々しさと情緒を含んでいたところ、三幕目に行って、小女お君に蛇の使いかたを教える辺。最後に、お君が復讐したと知って、断末魔の苦しみの中から、見るも物凄い快心の笑を洩す辺。流石と思われるものがあった。

けれども、全体を通じ、忠実な少女お君に、主人の仇討ちを思い立たせるほど纏々としてつきない林之助への執着が統一した印象となって浮上らなかったのは如何したものだろう。