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みずがめ

水甕

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,082 字 · 26 页

青空文庫

をつないできたという、みみっちく有難がる享楽気分まで交っていました。だから、各種の催し物にしても、在来の形式から一歩も出でず、新たな工夫創意などは片鱗さえも見えませんでした。復興だから在来の形式の踏襲でもかまわないとはいえ、少くとも何等かの純化浄化はあって然るべきだったでしょう。敗戦に打ち拉がれて地面を匐ってるようなそれら群衆の中で、仁木はもう少しく酔いながら、孤独な憂欝に沈みこんでゆきました。

復興祭だ、公然も内緒もあるものか、景気よくやっつけましょうや……などと屋台の飲屋の主人は言いながら、額には狡猾な笑みを浮べていました。種々の男が入れ代って、アルコールで調合した焼酎を飲んでゆきました。

その奥の腰掛に仁木は腰をおろし、飲台に肱をつき、焼酎のコップと煙草とを交る代る口へやりながら、孤独な憂欝にますます沈んでゆきました。その憂欝はあらゆることを忘れさせる魅力を持っていて、異邦人めいた感懐を彼に起させました。

彼がふと気がついてみると、あちらの端に坐ってる男が、鈎の手に曲ってるこちら側に坐ってる男へ、高飛車に突っかかり、こちらは卑屈に頷いたり弁解したりしていました。