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みずくさ

水草

久生 十蘭

「宝石」1947(昭和22)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,274 字 · 3 页

青空文庫

きのう誰かにやられ、きょうまた石亭にしめられたのでは田阪のあひるも楽じゃないなどとかんがえているところへ、石亭がへんにぶらりとしたようすで帰ってきて、手に握っていたものを縁の端へ置いた。髪毛が毬のようにくぐまった無気味なものである。

「それはなんだね」

「こんなものがあひるの胃袋から出てきたんです。まあ、見ていてごらんなさい」

石亭はひきつったような笑いかたをするともさもさを指でかいさぐって小さな翡翠の耳飾をつまみだした。

「これはヒサ子の耳飾ですから、髪毛もたぶんヒサ子のでしょう。継母がヒサ子を殺して池へ沈めたのを、あひるが突つきちらしてこれが胃の中に残ったというわけです」

「えらいことをいいだしたね」

「いや、そういえば思いあたることがあるんです。二た月ほど前、継母が疲れてこまるといってポリモス錠をとりにきましたが、あいつは新薬マニアですから、ポリモス錠の亜砒酸をどう使うかぐらいのことはちゃんと心得ているんですよ」

あひるが人間を食うかどうか、それもすこぶるあやしい話だが、死体を池へ沈めたものなら池を乾したりするはずがない。このごろ調子がおかしいと思っていたがだいぶいけないらしいと、それとなく顔をながめているうちに、最近の石亭の一句がこころにうかんだ。