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みずとりてい

水鳥亭

坂口 安吾

「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页

青空文庫

亮作もこの別荘へ一度だけ招待されたことがあった。なるほど当座しのぎの安普請で、部屋数は四間しかなかった。

鶏小屋が二つあった。大きい小屋に二三十羽の鶏が飼われ、小さい方は廃屋になっていた。亮作はセッパつまって、それを思いだした。もう何でもいいというヤケであった。

「たしか鶏小屋が一つ、あいてましたね」

「ハ? なんですか」

「鶏小屋が一つ、あいてましたね」

「ハア。鶏小屋ですか。あいています。それが、どうしたというのですか」

「あれを貸していただけませんか」

「鶏小屋を!」

野口は興にかられて亮作を見つめた。

「小さい方の使っていない小屋のことでしょうね」

「むろん、そうですとも。使用中のものを、お願いできるとは思いませんから」

「あの小屋なら、一間の四尺五寸、つまり一坪に足りないのですよ。あれをどうしようと仰有るのです」

野口は益々興にかられて亮作を見つめた。そんな目で見つめられると、亮作はナメクジが溶けるように目をすぼめて泣き顔になるのであったが、弱々しい、しかし執拗な抵抗が、また、カマクビをもたげるのである。

「いえ、ナニ、ちょッと本を二千冊ほど疎開させたいのですよ。