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みずとりてい
水鳥亭
「別冊文藝春秋 第一五号」1950(昭和25)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,705 字 · 62 页
家をもてる小数の一人となるかも知れない。
町の中の別荘とちがって、野口の住居は平野のドンヅマリの田畑の中に孤立している。ひょッとすると、助かる可能性がある。あるいはこの町でただ一人の家をもてる人となるかも知れない。
そう考えると、むくむくと人生の希望がわいてきた。
しかし野口の言い値は法外であった。彼は野口のずるさを憎んだ。
「この十倍も大きくて立派な別荘がたった五千円で売りにでていますよ。それでも買い手がありません。あたりまえですとも。一二ヵ月あとには、跡形なく吹きとばされるのですから。一二ヵ月の家賃ですから、まア、高くて百円です。あなたの家でしたら、三十円ですな。それでも高いぐらいです」
亮作は残酷な笑いをうかべた。
「冗談云っちゃいけません。消えてなくなる別荘とはちがいますよ。土地と源泉がついています。何十トンのバクダンでも、これをどうすることもできないのです」
野口は薄笑いをうかべて言い返した。一万円は持たないようだ。すこし高すぎたかな、と思った。そして高圧的な商談をたのしそうに語りつづけた。
「あなた、ひがんではいけませんよ。たとえば、単に別荘だけでしたら、金殿玉楼も買い手がないのは当然かも知れません。