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ひょうが
氷河
黒島 伝治
1928(昭和3)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,824 字 · 42 页
武装を整えた中隊が乗りこんだ大きい列車は、ゆる/\左右に眼をくばりつゝ進んで行った。線路に添うて向うの方まで警戒隊が出されてあった。線路は完全に、どこまでも真直に二本が並んで走っている。町は、まもなく見えなくなり、列車は速力が加わってきた。線路は谷間にかゝり、やがてそこを通りぬけて、また曠野へ出た。
雪は深く、線路も、草原も、道もすべてが掃きならされたようだった。そこらの林や、立木が遠い山を中心に車窓の前をキリ/\廻転して行った。いつか、列車は速力をゆるめた。と、雪をかむった鉄橋が目前に現れてきた。
「異状無ァし!」
鉄橋の警戒隊は列車の窓を見上げて叫んだ。
「よろしい! 前進。」
そして、列車は轟然たる車輪の響きを高めつゝ橋にさしかゝった。速力は加わったようだった。線路はどこまでも二本が平行して完全だった。ところが、中ほどへ行くと不意にドカンとして機関車は脚を踏みはずした挽馬のように、鉄橋から奔放にはね出してしまった。
四角の箱は、それにつゞいてねじれながら雪の河をめがけて顛覆した。
と、待ちかまえていたパルチザンの小銃と機関銃が谷の上からはげしく鳴りだした。