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ひょうが
氷河
黒島 伝治
1928(昭和3)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,824 字 · 42 页
か!
「まだ、俺等は、いゝくじを引きあてたんか!」彼等はまた考えた。
いのちが有るだけでも感謝しなければならない。
そして、又、
「アルファベット数えてしまえば、親爺や、お袋がいるところへ帰って行けるんかな。」そんなことを考えた。「俺等にも本当に恩給を呉れるんかな?」
そこで、一本の脚を失った者に二百二十円かそこらの恩給が、シーメンス事件で泥棒をあばかれた××大将の六千五百円の恩給にもまして有難く感じられて来るのだった。
六
病室は、どの部屋も満員になった。
胸膜炎で、たき出した番茶のような水を、胸へ針を突っこんで汲み取る患者も、トラホーム・パンヌスも、脚のない男も一つの病室にごた/\入りまじった。
「軍医殿、栗本も内地へ帰れますか?」
彼は、自分から癪に障るくらい哀れみを乞うような声を出してきいた。
「あゝ。」
栗本の腕は、傷が癒えても、肉が刳り取られたあとの窪んだ醜い禿は消す訳に行かなそうだった。
「福島はどうでしょうか、軍医殿。」
「帰すさ。こんな骨膜炎をいつまでも置いといちゃ場所をとって仕様がない。」
あと一週間になった。と、彼等は、月火水木……と繰り方を換えた。