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えいえんのかんかく

永遠の感覚

高村 光太郎

「知性 第四巻第一号」、1941(昭和16)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,112 字 · 5 页

青空文庫

ところで其処へニヒルが頭を出す。永遠などという事があてになるだろうか。不朽、不滅などというのはあわれな形容詞に過ぎなくはないか。法隆寺金堂の壁画は毎日毎夜崩壊をつづけている。エジプトの古彫刻とて高が五十世紀の年月を経たに過ぎず、ギリシャ、ローマの古美術も大半は残欠であり、天地の悠久に比べて斯の如きものを永遠と称するのは大に甘い気休めではないか。天地といえども壊滅は予約されているし、第一、自己が死んでこの世に消滅した後の作品の不朽と否とを心にかけるという事自身が既に卑しい考ではないか。そういう関心事一切が一種の虚栄であり、空の空なるものを欲する弱さではないか。芸術に関して永遠性というようなことを口にするのがそもそも迂愚であり、荒唐の言を弄するに外ならないではないか。芸術は製作時に於ける作者内面の要求を措いて他に考える余地を持たないのが本当ではないか。

そこで又考える。芸術の求める永遠性そのものが単に時間の問題にとどまるならばこの疑問も至当である。そしてただ時間を凌ごうという慾望に駆られることが芸術家の焦心事であるならば、それは確かに卑俗の心であるに相違ない。