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えいえんのかんかく
永遠の感覚
高村 光太郎
「知性 第四巻第一号」、1941(昭和16)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,112 字 · 5 页
永遠の時間性は又空間性に変貌して高度な普遍性につながる。この普遍性は所謂通俗性とは峻別せらるべきもので、人間精神の地下水的意味に於ける遍漫疏通の強力な照応であって、これなくしては芸術の人類性が成立しない。およそ芸術上の大きさとはこれを意味する。真に独自の大きさを持つ芸術作品は直ちに人にうけ入れられない。必ず執拗な抵抗をうける。不可解のためである事もあり、解り過ぎるためである事もある。しかも太陽が霜を溶かすようにいつの間にか人心の内部にしみ渡る。真に大なるものは一個人的の領域から脱出して殆ど無所属的公共物となる。有りがたさが有りがたくなくなるほど万人のものとなる。「ベトオフェンは死んだ」と言われる頃、ベトオフェンは人類の心に隈なく住むに至る。芸術上の大を持たない作品は特殊の美として存在するが斯の如き悠久にして普遍の感を持たない。偏倚の美乃至パテチックの美は斯の如き形而上的の永遠を持たない。しかも世界に星の真砂の如く、恒河沙数の如くきらめくそういう明滅の美こそ真に大なるものを生ましめる豊饒の場となるのである。
芸術上のこの永遠性が何処から来るか。こればかりは如何に論議を重ねても人間の揣摩の及ぶところでない。