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えどのかじゅつ

江戸の火術

野村 胡堂

在线阅读野村 胡堂《江戸の火術(えどのかじゅつ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,929 字 · 36 页

青空文庫

「拙者は江州の浪人者、井上半十郎と申す。それではお言葉に甘えて、江戸までの道中雑用拝借いたす、――路用を失った上は、乞食をしても古里の江州へ帰るところなれど、身にも世にも替えられぬ急ぎの用事で、江戸へ馳せ向うところ、我慢や対面にこだわっては、拙者一代の孝道が相立ち申さぬ――」

そう言って、片手を畳の上に落した半十郎の真剣さ、少し華奢ですが、秀でた眉目も、二十七の若さと、頼もしさにハチ切れそうです。

「まア、そんなにまで仰しゃらなくとも」

女は妙に湿りました。

「大事な荷物を奪い還して頂いた上、路用まで用立てて下さる恩人の、せめて御名前が承り度い」

「江戸、小石川の生れ、武家には育ちましたが、仔細あって町人となった、――静――と申すのが私の名前で御座います」

「お静殿――と言われるか」

「孝道の為の御出府と仰しゃると、矢張り親の敵討というような――」

お静は声を潜めました。井上半十郎の素朴を様子は、物語の敵討の主人公らしく見えたのでしょう。

「いや、敵討と申すわけではないが」

「――――」

「別に隠す事では無い、恩人のお静殿に、打明けるのも何んかの因縁、――残らずお話申そう」