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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
岡本綺堂『江戸情話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:籠釣瓶、箕輪心中、両国の秋、心中浪華の春雨、鳥辺山心中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 页
「ほほ、親方も粋じゃ。大抵はこうと察していさんしょう」と、お園は笑った。
六三郎も黙って笑った。お園はその耳に口を寄せて言った。
「お前、江戸の女子と心安うしなさんすな、よいかえ」
「なんの、阿房らしい」
ようよう起ち上がった六三郎のうしろ姿を見ると、お園は急に胸がいっぱいになった。ふた足三足送ってゆくうちに、胸はいよいよ詰まってきて、不思議な暗い影がお園の周りにまつわって来るように思われた。お園は男といっしょに闇の中を迷っているようにも感じられて、一種の恐怖に足がすくんだ。力のない男の歩みも遅かった。
どう考えてもこの弱々しい男を、見も知らぬ遠い他国へ追いやって、たんと苦労させるのがいじらしかった。苦労をする男も辛いには相違ないが、これから先、朝に夕にその苦労を思いやる自分の辛さもしみじみ思いやられた。そんな苦しい思いをした上で、確かに末の楽しみがあるやらないやら、それもお園は俄かに不安になって来た。眼の前はいよいよ暗くなって来た。
「六三さん。お前、どうしても江戸へ行く気かえ」と、お園は男の肩に手をかけて今更のように念を押した。
男は不思議そうな顔をして立ちどまった。