轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
岡本綺堂『江戸情話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:籠釣瓶、箕輪心中、両国の秋、心中浪華の春雨、鳥辺山心中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 页
たとい自分には何の疚しい心がないとしても、思いやりのない世間の人間はいろいろの評判を立てるに相違ない。菊地半九郎は売女にうつつをぬかして大小を手放したとただ一口にいわれては、武士の面目にもかかわる。支配頭への聞えもある。なるほど市之助が承知してくれないのも無理はないかとも思われたので、彼は刀を売ることを躊躇した。
こうなると、お染の顔を見るのが辛い。お染も自分の顔を見ると、よけいに悲しい思いをするかも知れない。いっそ出発するまでは彼女にもう逢うまいかと半九郎は思った。そうして、ひと晩は花菱に足をぬいてみたが、やはり一種の不安と憐れみとが彼を誘って、あくる日は花菱の座敷でお染の暗い顔と向かい合わせた。半九郎はその後もつづけてお染と逢っていた。
十月にはいると、半九郎のからだも忙がしくなった。将軍はいよいよこの十日には出発と決まったので、供の者どもはその準備に毎日奔走しなければならなかった。
その忙がしいひまを偸んで、ある者は京の土産を買い調えるのもあった。ある者は知るべのところへ暇乞いに廻るのもあった。神社や仏閣に参拝して守り符などを貰って来るのもあった。