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けっせんかわなかじま うえすぎけんしんのまき
決戦川中島 上杉謙信の巻
――越後守安吾将軍の奮戦記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,278 字 · 19 页
余の胸に童心がよみがえった。
「一泳ぎしてくるぞ」
「それに限りますな。それまでに昼食の用意を致させましょう」
余が旅館の裏口から裸で出ようとすると、縁側の柱にもたれてうたたねしていた女がびっくりしたように目をさまして、
「下駄はきなれ」
と云った。とかく女はねぼけるものだ。砂丘を降りて海まで百メートルの道を、裸のくせに下駄をはくバカはなかろう。
しかるに余が砂丘を半分降りたころには、足の裏の焦熱地獄に気も狂わんばかりであった。余は荒れ馬の如くに砂丘を降り、デングリ返しを打ったけれども、まだ海までは七八間の距離があった。さらに二度デングリ返しを打ち、走り幅飛を二回やったがまだ届かず、頭を先にして飛びこんだが、そこはまだ海ではなくて波の打ちよせる汀であった。つまり余は汀の砂中に顔の半分を埋めたのである。しかしその痛さの如きも、焦熱地獄に比べれば物の数ではなかったのである。
旅館全体にゲラゲラと笑いどよめく声があがった。振り仰ぐと五十人あまりの女が縁側から余を眺めて笑っているのだ。
余が一泳ぎして休んでいると、五十人あまりの女性がそれぞれ海水着の姿となり、それぞれ下駄をはいて静々と砂丘を降りてきた。