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じんちょうげ
沈丁花
宮本 百合子
「文芸春秋」1927(昭和2)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,478 字 · 19 页
それ故、はる子のところへ遊びに来るのは午後だ。はる子も寝坊な女であったから、それは好都合だが、一寸話すともう四時すぎる。千鶴子は三十分位で帰らなければならない時があった。夕飯をたべてから弟は夜学に行った。その仕度を彼女はおくらせてはならない。――
もう永年のつき合いで、だが顔を見、やあというだけで気がくつろぐというのではないから、はる子は時に千鶴子の訪問から気ぜわしさだけをアフタア・イメイジとして受けた。家にいても堪え難い空虚を感じるらしく、千鶴子は、
「弟の帰るのが待ち遠しくて待ち遠しくて、この間もいきなり顔を見ると、――ちゃんと云ったきり泣いてしまいました。弟はまだ子供ですからね、困っていました」
と話した。
彼女をはる子に紹介した×さんが、
「女は結婚して損はないんだがなあ」
と云ったということ。また、×氏が、
「いくつです」
と云うので、
「二十五です」
と答えた。
「へえ――。いつの間にそんなに年をとりました。――×××が妻君をなくし、子供は三人あるが――どうです、その人と結婚する気になりませんか」
と云ったと云うことなど、千鶴子は屈辱を感じてはる子に話した。