轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かわあかり
河明り
岡本 かの子
「中央公論」1939(昭和14)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,244 字 · 98 页
娘は直きに悪びれずに男の顔をなつかしそうにまともに見はじめた。だが何気ないその笑い顔の頬にしきりに涙が溢れ出す。娘はそれをハンケチで拭い拭い男の顔に目を離さない――男もいじらしそうに、娘の眼を柔かく見返していた。
社長もすべての疎通を快く感ずるらしく、
「これで顔が揃った。まあ祝盃として一つ」などとはしゃいだ。
私はふと気がつくと、娘と男から離れて、独り取り残された気持ちがした。こちらから望んで世話に乗り出したくらいだから、利用されたというような悪毒く僻んだ気持ちはしないまでも、ただわけもなく寂しい感じが沁々と襲った。――この美しい娘はもう私に頼る必要はなくなった。――しかし、私はどんな感情が起って不意に私を妨げるにしても自分の引受けた若い二人に対する仕事だけは捗取らせなくてはならないのである。私は男に、
「それで、結婚のお話は」
ともう判り切って仕舞ったことを形式的に切り出した。すると男はちょっとお叩頭して、
「いや、私の考がきまりさえしたら、それでよろしいんでございましょう。いろいろお世話をかけて申訳ありません」といった。
娘は私に向って、同じく頭を下げて済まないような顔をした。