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かわみずのはなし
河水の話
小川 未明
「早稲田文学」1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,668 字 · 8 页
」といって、河水は、さっさと流れていってしまいました。バナナの皮も、それに、ついていかなければなりませんでした。
バナナの皮も、つえも、いまさら河水の無情なことを悟りました。そして、これからどうなることだろうと思っていました。
もはや、夜も、だいぶ更けたころであります。河は、町の間を流れていきました。どの家も戸をしめて、町は、しんとしています。たちまちあちらの町の裏から、按摩の笛の音が聞こえてきました。つえは、それをきくと、急に、いままでの生活が恋しくなりました。こうして、たよりない身の上よりか、たとえつらくても、にぎやかな町の中を歩いて、いろいろなものを見たり、聞いたりするほうが、どれほど、ましであったかしれなかったからです。
「どうか、私を、この町の岸につけてください。」と、つえは、河水に向かって頼みました。
けれど、河水は、振り向きもしませんでした。そして、いっそう速力をはやめて、町の間を過ぎていってしまったのです。
バナナの皮と、つえは、後になったり、先になったりしました。体の弱い、バナナの皮は、ぐったりとしてしまって、もはや、何事も、あきらめていたようです。