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かわはぜ
河沙魚
林 芙美子
「人間」1947(昭和22)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,653 字 · 24 页
「いいンだよ。私が勝手に何とか片をつけるもン、おじいちゃんは心配せんでもいいのよ……」
与平はコップを持っていた手を中途でとめて、じっと宙を見ていた。大きい耳がたれさがって老いを示していたが、まだ、狭い額には若々しい艶があった。白毛まじりの太い眉の下に、小さい引っこんだ眼が赤くただれていた。
「何とかなるで……金の工面をした方がよかろう?」
「うん、だけど、これ、私の考えだけどねえ、私、姉さんに話してみようかと思うンだけど、どうでしょう……。そして、隆吉さんが戻って来る前に、私、女中でも何でもして働きに出ようと思ってるンだけど……」
「ふン、太郎と光吉はどうするンだえ?」
太郎と光吉の事を云われると、千穂子はどうにも返事が出来ないのだ。新しい嫁を貰ってもらうわけにはゆかないものだろうかと、千穂子は心の底で思うのだった。血腥いことにならなければよいがと云う気持ちと一緒に、隆吉が思いきりよく、新しい嫁を選んでくれればいいと云った様々な思いが、千穂子の頭の中を焙るように弾ぜているのだ。
隆吉からは同情的な施しを受けてはならないと思った。殴るか、蹴るか、どんなにひどい仕打ちをされてもかまわないと思うのである。