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ほうえつクラブ

法悦クラブ

野村 胡堂

「小説の泉」1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,176 字 · 28 页

青空文庫

「待って、それを呑んではいけないッ」

何処からともなく絹を裂くような女の声がしました。佐々村村一はフト躊躇しましたが、次の瞬間にはもう、コップを唇に持って行って、一と息に呑み乾してしまったのです。

「お見事」

茶谷会長はそれを手を挙げて褒めると、振り返って会場を見渡しました。

「さて、皆様、お約束通り私は此処で、婦人方全部のヴェールを取り払って頂くように、お願い申上げ度いと思います。法悦倶楽部も恐らく今夜を最後に永久に解散することになるでしょう、――では、御婦人の皆様」

茶谷会長の言葉を待つ迄もなく、十一人の婦人達は、かなぐり捨てるように、その夜のヴェールをむしりとりました。

「あッ」

十一人の婦人は、美しいのも醜いのも、若いのも年を老ったのもありますが、男会員の全部の眼は期せずして、会長茶谷金弥夫人阿夜子の顔に注がれました。大菊石の、見る影もないと言われた阿夜子の顔に――、

が、それは痘痕どころか、磨き抜かれた宝石のような、世にも美しく輝やかしい顔だったのです。

そればかりでなく、阿夜子の美しい顔の中程には、小さい小さい紅石のような、燃ゆるほくろが一つ、覆うものもなく、会員全部の眼に焼き付いたのでした。