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うたかたのき
泡沫の記
久生 十蘭
(ルウドイヒ二世と人工楽園)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,889 字 · 26 页
この道はいきなり城に行くのではなくて、五十米ほど手前で二つに分れ、一方はオレンジや棕櫚や椰子の木の植わった絵のように美しい芝生につづき、そのむこうに按配よく配置されたつくりものの灌木の間に、カンタルディの「ファウストとグレートヘン」の群像があるのが見えた。一方の道を行くと、美しい絨氈のような円形花壇に取巻かれた土耳古式の園亭が、金渡金の丸屋根と尖塔を月光に輝かせながら夢のように立ちあがっていた。園亭の四方の欄間には、青と緑の、あらゆる色階をつくしたスティンドグラスを組合せて巧みに嵌めこんであるので、そこから来る月の光に一種、言いようのない魔術的な調子をつけている。園亭の前は雪を戴いたヒマラヤ山脈を遠景にした広い人工の沼で、インド産の白鳥が二羽、羽毛のほの白い色をうきあげながらゆるゆると遊弋していた。遠景の山脈は、いうまでもなく油絵具で描いた巨大な画面なのだが、ここでも、鏡の使用が、それを涯しない距離のむこうにおしやることに成功している、云々」
レルークは王の部屋へ入って行き、そこでなにかを発見して、言われたとおりに処分するのだか、なにを見たのか、それについては一行も書いていない。