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ちゅうもんのおおいりょうりてん
注文の多い料理店
宮沢賢治『注文の多い料理店』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『注文の多い料理店』序、注文の多い料理店、さるのこしかけ、茨海小学校、どんぐりと山猫、狼森と笊森、盗森、烏の北斗七星、月夜のでんしんばしら、水仙月の四日、山男の四月、かしわばやしの夜、鹿踊りのはじまり、雪渡り、気のいい火山弾、土神ときつね、楢ノ木大学士の野宿。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,269 字 · 223 页
「いつかの望遠鏡まだ来ないんですの。」樺の木がまた言いました。
「ええ、いつかの望遠鏡ですか。まだ来ないんです。なかなか来ないです。欧州航路は大分混乱してますからね。来たらすぐ持って来てお目にかけますよ。土星の環なんかそれぁ美しいんですからね。」
土神は俄に両手で耳を押えて一目散に北の方へ走りました。だまっていたら自分が何をするかわからないのが恐ろしくなったのです。
まるで一目散に走って行きました。息がつづかなくなってばったり倒れたところは三つ森山の麓でした。
土神は頭の毛をかきむしりながら草をころげまわりました。それから大声で泣きました。その声は時でもない雷のように空へ行って野原中へ聞えたのです。土神は泣いて泣いて疲れてあけ方ぼんやり自分の祠に戻りました。
(五)
そのうちとうとう秋になりました。樺の木はまだまっ青でしたがその辺のいのころぐさはもうすっかり黄金いろの穂を出して風に光りところどころすずらんの実も赤く熟しました。
あるすきとおるように黄金いろの秋の日土神は大へん上機嫌でした。今年の夏からのいろいろなつらい思いが何だかぼうっとみんな立派なもやのようなものに変って頭の上に環になってかかったように思いました。