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ちゅうもんのおおいりょうりてん

注文の多い料理店

宮沢 賢治

宮沢賢治『注文の多い料理店』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『注文の多い料理店』序、注文の多い料理店、さるのこしかけ、茨海小学校、どんぐりと山猫、狼森と笊森、盗森、烏の北斗七星、月夜のでんしんばしら、水仙月の四日、山男の四月、かしわばやしの夜、鹿踊りのはじまり、雪渡り、気のいい火山弾、土神ときつね、楢ノ木大学士の野宿。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,269 字 · 223 页

青空文庫

」

大学士はにこにこ笑い

立ちどまって巻煙草を出し

マッチを擦って煙を吐く。

それからわざと顔をしかめ

ごくおうように大股に

岬をまわって行ったのだ。

ところがどうだ名高い楢ノ木大学士が

釘付けにされたように立ちどまった。

その眼は空しく大きく開き

その膝は堅くなってやがてふるえ出し

煙草もいつか泥に落ちた。

青ぞらの下、向うの泥の浜の上に

その足跡の持ち主の

途方もない途方もない雷竜氏が

いやに細長い頸をのばし

汀の水を呑んでいる。

長さ十間、ざらざらの

鼠いろの皮の雷竜が

短い太い足をちぢめ

厭らしい長い頸をのたのたさせ

小さな赤い眼を光らせ

チュウチュウ水を呑んでいる。

あまりのことに楢ノ木大学士は

頭がしいんとなってしまった。

「一体これはどうしたのだ。中生代に来てしまったのか。中生代がこっちの方へやって来たのか。ああ、どっちでもおんなじことだ。とにかくあすこに雷竜が居て、こっちさえ見ればかけて来る。大学士も魚も同じことだ。見るなよ、見るなよ。僕はいま、ごくこっそりと戻るから。どうかしばらく、こっちを向いちゃいけないよ。」

いまや楢ノ木大学士は

そろりそろりと後退りして

来た方へ遁げて戻る。

その眼はじっと雷竜を見