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ちゅうもんのおおいりょうりてん

注文の多い料理店

宮沢 賢治

宮沢賢治『注文の多い料理店』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『注文の多い料理店』序、注文の多い料理店、さるのこしかけ、茨海小学校、どんぐりと山猫、狼森と笊森、盗森、烏の北斗七星、月夜のでんしんばしら、水仙月の四日、山男の四月、かしわばやしの夜、鹿踊りのはじまり、雪渡り、気のいい火山弾、土神ときつね、楢ノ木大学士の野宿。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,269 字 · 223 页

青空文庫

雷竜はあんまりひどい。前にも居るしうしろにも居る。まあただ一つたよりになるのはこの岬の上だけだ。そこに登っておれは助かるか助からないか、事によったら新生代の沖積世が急いで助けに来るかも知れない。さあ、もうたったこの岬だけだぞ。」

学士はそっと岬にのぼる。

まるで蕈とあすなろとの

合の子みたいな変な木が

崖にもじゃもじゃ生えていた。

そして本当に幸なことは

そこには雷竜がいなかった。

けれども折角登っても

そこらの景色は

あんまりいいというでもない、

岬の右も左の方も

泥の渚は、もう一めんの雷竜だらけ

実にもじゃもじゃしていたのだ。

水の中でも黒い白鳥のように

頭をもたげて泳いだり

頸をくるっとまわしたり

その厭らしいこと恐いこと

大学士はもう眼をつぶった。

ところがいつか大学士は

自分の鼻さきがふっふっ鳴って

暖いのに気がついた。

「とうとう来たぞ、喰われるぞ。」

大学士は観念をして眼をあいた。

大さ二尺の四っ角な

まっ黒な雷竜の顔が

すぐ眼の前までにゅうと突き出され

その眼は赤く熟したよう。

その頸は途方もない向うの

鼠いろのがさがさした胴まで

まるで管のように続いていた。

大学士はカーンと鳴った。

もう喰われたのだ、いやさめたのだ。