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つだせいふうくんのえとなんがのげいじゅつてきかち

津田青楓君の画と南画の芸術的価値

寺田 寅彦

「中央公論」1918(大正7)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,532 字 · 23 页

青空文庫

たいという考えをもっている人である。作画に対する根本の出発点が既にこういうところにあるとすれば津田君の画を論ずるに伝説的の技巧や手法を盾に取ってするのはそもそも見当違いな事である。小笠原流の礼法を標準としてロシアの百姓の動作を批評するようなものかもしれない。あるいはむしろ自分のような純粋な素人の評の方が却って適切であり得るかもしれない。一体津田君の主張するように常に新たな眼で自然を見直すという事は科学者にとっても甚だ重要な事である。科学の進歩の行き止りにならないのは全くそういう態度の賜物である。科学は決して自然をありのままに記載するものではない。自然の顔には教科書の文句は書いてない。自然を如何に見て如何に表現すべきかという事は全く自由ではないがしかも必ずしも絶対に単義的なものではない。例えば昼夜の交代太陽の運行を観測した時に地球が動いているとするか太陽が動いているとするかはただこれだけの現象の説明をするにはいずれでも差しつかえはない。しかし太陽が地球の周囲を動いているとすると外の遊星の運動を非常に複雑なものと考えなければならず、また重力の方則なども恐ろしく難儀なものになるに相違ない。