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つだせいふうくんのえとなんがのげいじゅつてきかち

津田青楓君の画と南画の芸術的価値

寺田 寅彦

「中央公論」1918(大正7)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,532 字 · 23 页

青空文庫

たったそれだけの眼の向け方でも今まで見逃していた自然の美しさが今更のように目に立つのである。写真機のピントガラスに映った自然や、望遠鏡の視野に現われた自然についても、時に意外な発見をして驚くのは何人にも珍しくない経験である。

芸術家としてどうすれば新しい見方をする事が出来るかという事は一概に云えない。それは人々の天性や傾向にもよる事であろうが、一つにはまた絶えざる努力と修練を要する事は勿論である。然るに現今幾百を数える知名の画家殊に日本画家中で少なくも真剣にこういう努力をしている人が何人あるかという事は、考えてみると甚だ心細いような気がする。それで津田君のこの点に対する努力の結果が既にどこまで進んでいるかは別問題としても、そういう態度とこれを実行する勇気とに対して先ず共鳴を感じないではいられないのである。

尤もどの画家でも相当な人ならばある程度まではそういう事を考えぬ人は無いかもしれないが、しかしそう考えるばかりで何時までも同じ谷間の径路を往復しながら対岸の自然を眺めているのでは到底駄目であろう。一度も二度も馴れた道を捨てなければならない、時には頭を倒にして見るだけの手数もあえてしなければならない。