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つだせいふうくんのえとなんがのげいじゅつてきかち

津田青楓君の画と南画の芸術的価値

寺田 寅彦

「中央公論」1918(大正7)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,532 字 · 23 页

青空文庫

そうして偶然に逢着したのが津田君であった。

洋画家並びに図案家としての津田君は既に世間に知られている。しかし自分が日本画家あるいは南画家としての津田君に接したのは比較的に新しい事である。そしてだんだんその作品に親しんで行くうちに、同君の天品が最もよく発揮し得られるのは正しくこの方面であると信ずるようになったのである。

津田君はかつて桃山に閑居していた事がある。そこで久しく人間から遠ざかって朝暮ただ鳥声に親しんでいた頃、音楽というものはこの鳥の声のようなものから出発すべきものではないかと考えた事があるそうである。津田君が今日その作品に附する態度はやはりこれと同じようなものであるらしい。出来るだけ伝統的の型を離れるには一度あらゆるものを破壊し投棄して原始的の草昧時代に帰り、原始人の眼をもって自然を見る事が必要である。こういう主張は実は単なる言詞としては決して新しいものではないだろうが、日本画家で実際にこの点に努力し実行しつつある人が幾人あるという事が問題である。

原始的無技巧という点では野蛮人の絵や子供の絵は最も代表的のものであろう。彼等の絵は概念的抽象的あるいはむしろ科学的なものである。