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こうずいたいりくをのむ
洪水大陸を呑む
海野 十三
「まひる」1947(昭和22)~1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,328 字 · 13 页
それは横へ出る光は、他の部分から出る光にじゃまをされて、純粋な形では出にくい。だから見えにくいのだということだった。
「なんでしょうね、山脈のむこうに二つ光っているものがありますね」
三四郎は、おじさんにたずねた。
「あれは月だよ」
器械の目盛をあわせていたおじさんは、かんたんに答えた。
「うそをいってらあ。月なら、ぼくだってわかりますよ。月が二つもあるわけがないじゃありませんか」
「ところが、それがあるんだよ。この光景にうそはない。一万年前には、地球のまわりを月が二つ、まわっていたんだね」
「ふーン。おどろいたなあ」
「二つの月のうち、その一つは、なくなった。見ていたまえ、やがてそれが見えるはずだ、一方の月がこわれて見えなくなるところがねえ」
「そんな光景が見えるんですか。ぼく、背中がぞくぞく寒くなった」
「それはそうだろう。月がなくなるなんて、たいへんな事件だ。それがために、当時地球に住んでいた人類は、どんな目にあったか。どんな苦しみにあったか。見ていたまえ、今にそれが見えるから……」
「お月様は今すぐこわれるんですか」
「まだ、ちょっと間がある。――この器械は途中をどんどんとばして行くが、今うつっているときからかぞえて、約百年のうちに、月の一つがこわれる」