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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
ことに胃の内容物を検査して貰うんだよ。いいかね」
「承知しました」
と、大江山課長は帆村にやりこめられたのを我慢してそれを部下に命令を下した。そこで婦人の屍体はすぐ真白な担架の上に移され、鋪道の傍に待っていた寝台自動車にのせて、送りだされた。物見高い群衆は、追い払えど、なかなか減る様子もない。
「帆村君」と大江山課長が近づいて「怪紳士の行方が分るのは幾時ごろかね。十日も二十日も懸るのなら、こんなとこに立っていては風邪を引くからね」
「イヤ課長さん。そうは懸らないつもりですよ。まず早ければ三十分、遅くても今夜一杯でしょう」
「そんなに懸るのかネ。では一応本庁に引上げて、君にビールでも出そうと思うよ」
そういうと、大江山は検事と相談して、検察隊一行の引揚げを命じたのだった。
警視庁へ引上げた一行は、とうとう夕飯が出るようになっても、帆村の助手の報告を聞くことが出来なかった。それに引き替え、大学の法医学教室からは、婦人の死因について第一報が入って来た。
「婦人ノ推定年齢ハ二十二歳、目下姙娠四箇月ナリ、死因ハ未ダ詳カナラザレド中毒死ト認ム」
この報告は捜査本部の話題となった。