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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

の面上目懸けて飛んでいった。

「呀ッ――」

と叫んだのが先だったか、ドーンというピストルの音が先だったか、とにかく首領は素早く背を沈めた。

と、それを飛び越えるようにして円弧を描いていった黒塊は、行手にある頑丈な壁にぶつかって、

ガガーン!

と一大爆音をあげ、真白な煙がまるで数千の糸を四方八方にまきちらしたように拡がった。

「曲者! 偽団員だ!」

「遁がすな、殺してしまえ!」

覆面のない十数名の団員はてんでに喚きながら、怪しき黒影の上に殺到していったが、あらあら不思議、どうした訳か分らないが、彼等は拳を勢いよくふりあげたのはよいが云いあわせたように、よろよろと蹣跚き、まるで骨を抜きとられたかのように、ドッと床の上に崩折れてしまった。途端に鼻粘膜に異様な鋭い臭気を感じたのだった。毒瓦斯!――もう遅い。

「ざまを見ろ!」と覆面を取らぬ怪人は、ふくんだような声で叫んだが、

「あッ、こいつは失敗った」といって飛び出していった。そこにたしかに首領が立っていたと思ったのに、何処へ行ったか、首領の姿がなかった。床の上には丸い鉄扉が儼然と閉じていて、蹴っても踏みつけても開こうとはしない。