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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

「生き埋めか? そいつはたまらん!」

と帆村は独言を呟いたが、彼はそれほど慌てているわけではなかった。彼はこの屍室にはもっと汚穢した空気が溜っていなければならぬのに、それほどではないのを不審に思った。すると――どこかに空気抜けが明いているに違いない。彼は薄暗い天井に眼を据え、綿密に観察していった。果然――

「ああ、あそこに空気抜きがある!」

彼はとうとう部屋の一隅に求めるものを発見した。どうやら身体が抜けられるらしい。それが分ると、彼は急いで樽の明いているのを集めた。そしてそれを城のように積み重ねていった。遂にそれは天井に達した。彼は雀躍せんばかりに喜んで、その空気の抜ける孔の中に匍いこんだ。

孔の中は冷え冷えとしていた。そして彼の元気を盛りかえらせるような清浄な空気の流れがあった。彼は思わず深呼吸をくりかえしたが、それが済むと、ソロリソロリと真暗な孔の中を匍い始めるのだった。

空気孔は太い鉄管になっていて、帆村の身体を楽に呑みこんだ。ソロソロと横に匍ってゆくと、掌は鉄管のために冷え冷えと熱をとられ、そして靴が管壁に当ってたてる音がワンワンと反響して、まるで鬼が咆哮している洞穴に入りこんだような気がした。