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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

手紙はクルクルと廻りながら、とうとう鉄格子の近くまで上って来た。――彼は指を格子の中へ出来るだけ深くさしこんだ。二本の指先が辛うじて手紙の端を圧えた。

「占めた!」

思わず指先が震えだした。途端に封筒がスルリと脱けて下に舞い落ちた。呀ッと叫ぶ余裕もない。指先には四つ折にした手紙があるのだ。彼は天佑を祈りながら指先に力を籠めて静かに引張りあげた。遂に手紙の端が格子の上に出た。――もう大丈夫!

摘み上げた手紙を、取る手遅しと開いてみれば、こは如何に、そこには唯、水兵が煙草を吸っているような漫画が書き散らしてあるばかりだった。途端に下の部屋にドヤドヤと荒々しい靴の音がした。

危機一髪

帆村が空気孔から見下ろしているとも知らず、突然下の部屋に現われたのは、例の密偵団の覆面をした二人の怪人物だった。その一人は首領「右足のない梟」であることは確かだった。もう一人の人物は、何物とも知れない。

「よく来てくれたねえ」

といったのは首領だった。

「君の非常警報を受信したので、すぐに軽飛行機で高度三千メートルをとって駈けつけてきた。一体どうしたのだ」

といったのは、別の人物だった。