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りゅうせんスパイ

流線間諜

海野 十三

「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页

青空文庫

を覘うことにし、射撃の間隙を数えながら、ここぞと思うところで、真っしぐらに突撃した。敵は帆村が手許にとびこんできたのにハッと狼狽して拳銃をとりなおそうとする一刹那、

「エイッ、――」

と叫んで帆村はムズと相手の内懐に組みついた。

「うぬ、日本人め!」

と「右足のない梟」は叫んで、大力を利用してふり放そうとするが、帆村は死を賭して喰い下った。

「折れた紫陽花――早く射撃するのだ。この日本人を生きて出してはいかぬ。構わぬから僕を撃つつもりで猛射したまえ」

「そいつは……」

「いいから撃て! 祖国のためだ、われわれの名誉のためだ、早く撃て!」

敵ながら天晴なことをいった。流石は首領として名ある人物だけのことはあった。――B首領の「折れた紫陽花」は決心をしたものか、その返事の代りに、ズドンズドンと拳銃の銃口を、組みあった二人の方に向けた。

「あッ、――うぬッ」

帆村は低く呻って歯をギリギリと噛みあわせた。左の腕に、錐をつきこんだような疼痛を感じた。

「やられた!――」

と、その次に叫んだのは「右足のない梟」だった。二人の敵味方は、組み合ったままドウとその場に倒れた。

「折れた紫陽花」