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りゅうせんスパイ
流線間諜
海野 十三
「つはもの」1934(昭和9)年~1935(昭和10)年頃
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,982 字 · 70 页
どうだ、これでも分らぬかという風に……。
「ベーリング海峡ガ、望遠暗視機ニ感受シ始メタ。映写幕ヲ注視!」
映写幕といわれて、その上を見ると、なるほどベーリング海峡らしいものがうつっている。両方から象の鼻のように出ているのはウェールス岬とデジネフ岬にちがいない。ああ、しかもその両者を連ねるものは、満々たる海水にも浮氷にもあらで、これは城壁のように聳えたった立派な大堰堤だった。
「分った!」と帆村は叫んだ。「ベーリング海峡の海水を堰きとめると、そこから南の地方が暖流のために、俄かに温くなるのだ。いままで寒帯だった地方が温帯に化けるのだ。そこで俄然その宏大な地方を根拠地として某国の活溌な軍事行動が疾風迅雷的に起されようとしているのだ。うっかり油断をしていたが最後、悔いて帰らぬ破滅が来るばかりだった。ああ戦慄すべき大計画! あのとき密書が自分の手に入らなかったら……」
帆村は慄然として、隣席の牧山大佐を顧みた。しかし大佐の姿は、もうそこにはなかった。その代り受話器の中から儼然たる号令が聞えてきた。
「総員、配置につけッ!」