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りゅうこうさっかのし

流行作家の死

野村 胡堂

「新青年」1932(昭和7)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页

青空文庫

醸し出して居ります。

「モシモシ、モシモシ、そちらは小栗さんですね、こちらは関東新報ですがね、――御主人が何うかなすった相じゃありませんか、詳しい事はいりません、締切の時間ですから、兎に角一応確かめて、改めて又詳しいことを聞かして頂き度いんです、え? 何んですって? 何うもしない、離室に寝て入らっしゃる? 本、本当ですかそれは?」

「勇ッその電話を貸せッ、切るなッ、――あ、モシモシ僕です。判りますか。関東新報の千種十次郎――、実は今小栗君が自殺をしたと言う電話が来たんです、貴方は爺やさんの江藤さんですね。おかしいなア、――確かに夕方離屋に引取った切りですが、仕事があると言ってネ? 灯が点いてますか点いてる、死ねば一番先に貴方が知るわけですね、可怪いなア、併し悪戯にしちゃこの夜中に少し念入りだ。小栗君の部屋を見てやってくれませんか、電話は――この儘にして待って居ましょう」

千種十次郎の顔には、恐ろしい疑惑が、雲の如く往来しました、「小説家小栗桂三郎自殺す」と書いた標題だけの原稿と、工場から最後の原稿を催促に来た職長の顔を眺め乍ら、年寄の江藤が、玄関側の自分の部屋から、離屋へ行って帰って来るまでの時間を、考えて居りました。