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りゅうこうさっかのし
流行作家の死
野村 胡堂
「新青年」1932(昭和7)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,876 字 · 28 页
「子供の声で自働電話からかけて来たんです。それにしてもおかしいなア、兎に角離屋を見せて下さい、まだ警官は来て居ないでしょう」
「え、ツイ十分ばかり前に掛り付けのお医者がお出下すっていろいろ手当をして下さいましたが、亡くなってから一時間以上経つそうで、どうしてもいけません、ツイ今しがた警察へ電話を掛けたところですが、警官がお見えになるまでは――遠いところですから、まだ五分や十分はかかりましょう」
顔馴染の江藤老人は、顛倒したうちにも、斯んな事を言って、足の勇を離屋へ案内してくれます。
死んだ小栗桂三郎は一体変った生活様式が好きな男で、近頃は夫人の浪子と別れて女優上りの作家で、立花秀子という、有名な美人と親しくして居るという話でした。
かなり広い家の中には、爺やの江藤老人夫妻と、書生の角木と、女中が二人、いつも外でばかり暮らすような男ですから、これだけの奉公人は、大した仕事もなく、銘々の内職をし乍ら給料を貰って居る有様でした。
小栗自身は、家に居る時は大抵離室の書斎で、書き物や、考え事のある時は、呼鈴を鳴らさなければ、一歩も入ってはいけないことにされて居ります。