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うみにいくるひとびと
海に生くる人々
葉山 嘉樹
在线阅读葉山 嘉樹《海に生くる人々(うみにいくるひとびと)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,305 字 · 321 页
その針はどんな防寒具でも通すのだから、水夫らの仕事着などは、蚊帳のようであった。彼らは、雨も雪も降らないのに、合羽を着ていた、それは寒さをも防ぐし、軽くもあるのだ。そして飛沫をも除けることができるのだ。
十二月三十一日、午前九時――全く、うまく行ったものだ――万寿丸は横浜港内深くはいって、ほとんど神奈川沖近くへ投錨した。
本船が港内にはいるや、すぐに会社からのランチが、本船のまわりを水ぐものようにグルグル回りながらついて来た。
それは十二月三十一日であった。大晦日であった。それは、いかなる労働も休んでいるはずであった。けれども、その当時は戦争が、ヨーロッパにおいて行なわれていた。そのために、狂的な経済的好況が、日本のブルジョア階級を、踊り菌でも、食った人のように、夢中に止め度もなく踊り狂わせた。そして、その有頂天な踊りと、そのための労働者へ対しての節欲とが、その大晦日に、仲仕をして石炭荷揚げをなさしめた。すなわち、万寿丸には、仲仕が、ランチにひかれた艀の中に満載されて送りつけられた。仲仕――権三といわれていた――は、特別の賃銀を支払われると言う約束で、明日のお屠蘇の余分の一杯をあてにしてやって来たのだ。