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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
「大陸」1939(昭和14)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,311 字 · 48 页
わたしははじめから花子をあがめまつり、にくしんの妹のごとくにもちんちょうしておったのでありますが、こういうあんばいを見てはとてもかんべんがなりませず、いきなり突立って、花子はきょうからおれのものにするからくやしかったらどいつでもやってきやがれとたんかをきりました。ひごろ皮剥の、ももんじいのと馬鹿にされとおしていたうらみもてつだって、みなのやつらを前においていいたいほうだいなごたくをならべてやったのであります。すると荒木はごうせいに腹をたて、酒のいきおいもありましたろうが、狭山をやっつけたやつにァ花子をやるべとひどく叔父ぶってもったいぶったことをいいました。みないやおうはなく、もう花子の婿にでもなった気で大よろこびでありました。翌じつのあさ十時ごろ乾燥所のまえのひら地へあつまり、みなで冷酒をひと口ずつ飲みまわしまして、いよいよ決闘にとりかかりました。まぶしいように晴れた朝で、みな上きげんでニコニコ笑っておりました。さいしょの相手は鈴木でありまして、あいつは匕首をもち、わしはおっとせいを撲りころす太い大棍棒でむかいました。鈴木はもと長万部のばくちうちで、ひとをころしたおぼえのあるやつで、みなのほうへふりかえって舌をだしたり、じょうだんをいったりしました。