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からさわのいわごやのあるよのこと
涸沢の岩小屋のある夜のこと
大島 亮吉
「登高行 第五年」1924(大正13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,010 字 · 14 页
それでここでは記述のうえの都合からそれを同じ時と場所に於て起った事象の如くに取扱かったのである。
私らの仲間はいつも集る度ごとに「山」について語った。それはいろいろのことを含んでいた。それは山登りのうえのプラクティシュなことを話したと同時に、また或る時には山登りのうえのメタフィジィークについても大いに語り合ったことがある。私らは若い、だからそんな時には、夢中になって、さもえらそうに、いろいろのことをしゃべった。それ故そこにはあるいは青年の純情とも言いつべきものがあるかもしれない。確かにその時どきのある一個の事象に対しては幼稚なまでに直路なライデンシャフトを持ってたかも知れない。あるいはこの後、ずっと時が経ってから顧みる時は、そこに恐ろしく生真面目な、空元気のある、深刻さがあった。そしてやや滑稽な空気が漂っていたのを認めざるを得ないかも知れない。しかしそれはどうでも自分にはいいことだ。人間は常に歩んでいるものだと私はおもう。昨日も今日とは同じきものではないかも知れない。だからその時と現在との間にどんな深いけじめがあろうと、どんな遥かな隔りがあろうと、それはなんでもないことだ。