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しんざんのあき

深山の秋

小川 未明

「真理」1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,725 字 · 10 页

青空文庫

彼は、金鎚をふり上げながら、

「酢に水を割って入れてやったが、獣物たちは、酒の味がわかるまいから、たぶん人間は、こんなものを飲んでいると思うことであろう。それとも酒でないと悟るだろうか?」

山は静かであり、木々の紅葉はこのうえもなく美しかったが、独り彼はなにか心におちつかないものを感じたのでした。峠を降りかけると、ざわざわといって、そばの竹やぶが鳴ったので、くまが、復讐にやってきたかと足がすくんでしまった。しかし、それは、西風であって、高い嶺を滑った夕日は、雪をはらんで黒雲のうず巻く中に落ちかかっていたのです。