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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

お光さん、どうか悪く思わねえでね、これはこの場限り水に流しておくんなよ」

「どうもお前さんが、そう捌けて言っておくれだと、私はなおと済まないようで……」

「何がお光さんに済まねえことがあるものか、済まねえのは俺よ。だが、そんなことはまあどうでもいいとして、この後もやっぱりこれまで通り付き合っちゃくれるだろうね?」

「なぜ? 当り前じゃないかね?」

「だって、亭主がありゃ、もう野郎の友達なんざ要らねえかと思ってさ」と寂しい薄笑いをする。

「はばかりさま! そんな私じゃありませんよ」と女はむきになって言ったが、そのまま何やらジッと考え込んでしまった。

男はわざと元気よく、「そんなら俺も安心だ、お前とこの新さんとはまんざら知らねえ中でもねえし、これを縁に一層また近しくもしてもらおう。知っての通り、俺も親内と言っちゃ一人もねえのだから、どうかまあ親類付合いというようなことにね……そこで、改めて一つ上げよう」

差さるる盃を女は黙って受けたが、一口附けると下に置いて、口元を襦袢の袖で拭いながら、「金さん、一つ相談があるが聞いておくれでないか?」

「ひどく改まったね。何だい、相談てえのは?」