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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

と言っているところへ、お光は写真を持って上って来た。

「さあ、金さん」と差し出されたのを、金之助は手に取って見ると、それは手札形の半身で、何さま十人並み勝れた愛くるしい娘姿。年は十九か、二十にはまだなるまいと思われるが、それにしても思いきってはでな下町作りで、頭は結綿にモール細工の前し、羽織はなしで友禅の腹合せ、着物は滝縞の糸織らしい。

「ねえ金さん、それならお気に入るでしょう?」とお光は笑いながら言ったが、亭主の前であるからか辞使いが妙に改まっている。

「そうですね、私にゃ少し過ぎてるかも知れねえて」

「そんなことはないけど、写真で見るよりかもう少し品があって、口数の少ないオットリした、それはいい娘ですよ」

「そんないい娘が、私のような乱暴者を亭主に持って、辛抱が出来るかしら」

「それは私が引き受ける」と新造が横から引き取って、「一体その娘の死んだ親父というのが恐ろしい道楽者で自分一代にかなりの身上を奇麗に飲み潰してしまって、後には借金こそなかったが、随分みじめな中をお母と二人きりで、少さい時からなかなか苦労をし尽して来たんだからね。並みの懐子とは違って、少しの苦しみや愁いくらいは驚きゃしないから」