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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

とお光は身支度しかけたが、「あの、こないだの写真は空いてて?」

「持ってくかい?」

「え、あれはほかでちょいと借りたんだから」

五

お光の俥は霊岸島からさらに中洲へ廻って、中洲は例のお仙親子の住居を訪れるので、一昨日媼さんがお光を訪ねた時の話では、明日の夕方か、明後日の午後にと言ったその午後がもう四時すぎ、昨日もいたずらに待惚け食うし、今日もどうやら当てにならないらしく思われたので。

「今まで来ないところを見ると、今日も来ないんだろう、どうも一昨日行った時のお光さんの様子が――そりゃ病人を抱えていちゃ、人のことなんぞ身にも人らなかろうけれど――この前家へ来た時の気込みとはまるで違ってしまって、何だか話のあんばいがよそよそしかったもの」と娘を対手に媼さんが愚痴っているところへ、俥の音がして、ちょうどお光が来たのであった。

親子は裁縫の師匠をしているので、つい先方弟子の娘たちが帰った後の、断布片や糸屑がまだ座敷に散らかっているのを手早く片寄せて、ともかくもと蓐に請ずる。請ぜられるままお光は座に就いて、お互いに挨拶も済むと、娘は茶の支度にと引っ込む。